鍛金の技術を習得した小林は、本ビエンナーレにおいて、旧五十嵐邸歯科医院2階の襖絵に関連をもたせつつ、戦時中から現代の富士市に触れる作品を展示している。
開催前、小林は戦時中に作られた富士飛行場跡地を歩き、四つ葉を手に入れた。
それを象(かたど)った作品が《 空と土のあいだ 》だ。その飛行場建設にあたり、中国からやってきた労働者が動員されたと小林は言う。牡丹の花は中国が原産で「花の王」とも呼ばれている。その牡丹が1937年の支那事変を祝って実際に一般に出回った酒器にさされ、《
ゼロ戦、富士ノ山ニムカフ 鋁富貴花編 》となっている。
そして、《 maJjuzrii 19
》は、19の文殊菩薩の意。高速増殖炉の「もんじゅ」の炉心に差し込まれる制御棒が19本であることがそのタイトルの理由であるが、「知恵」の象徴である文殊菩薩がもしかしたらこの国を破局へと向かわせることになるかもしれない。さまざまなプレートが合わさるこの地のすぐ近くにも検査中の原子力発電所があることを思い出させるだろう。時に詩的なものは、時に政治的にもなるということに思いを巡らせずにはいられない。
ディレクター・小澤慶介
《 空と土のあいだ 》
2016・真鍮
《 ゼロ戦、富士ノ山ニムカフ 鋁富貴花編 》
2016
富貴花(牡丹)・鋁(アルミ)製
民具(昭和前期)
《 maJjuzrii 19 》
2011
真鍮 brass
私が展示しているエリアの蒲原(かんばら・静岡市)はアルミ事業で有名な地です。
蒲原に設立された日本軽金属株式会社によって支那事変後の昭和15年からアルミ製錬の操業が始まりました。この町で生産されたアルミは、侵攻する機体となり、空襲を迎撃する機体となり、片道燃料で若い命を乗せ南方に向かう機体となり、敗戦後の此国の復興、高度経済成長を支え、新幹線の車体にもなり、国民の生活を変えていきました。
しかし、二度にわたるオイルショックによる電力高騰で完全に国際競争力を失った此の国のアルミ製錬事業は、80年代に壊滅的となり2014年、富士川の自社水力発電で継続してきたここ蒲原事業所の終了をもって終焉を迎えました。蒲原は此国のアルミ産業の盛衰と運命を共にした地でもあるのです。
駿河の国の芸術祭
富士の山ビエンナーレ2016 -フジヤマ・タイムマシン-
FUJINOYAMA BIENNALE 2016
会期:2016年10月28日(金)−11月27日(日)
時間:10:00-16:30
入場料:無料
主催:富士の山ビエンナーレ実行委員会
共催:静岡県
後援:富士市、富士宮市、静岡市
公式ホームページ http://fujinoyama-biennale.com
国登録有形文化財 旧五十嵐邸歯科医院
http://igarashitei.com/