美術家  小林正樹
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木津川アート スタジオ制作中

京都府南部の街、木津川市主催で11月2日より開催される「木津川アート」に参加します。9月に入り大分過ごしやすくなってきましたので制作を急ピッチで進めてます。11月には静岡で7日から開催される「富士の山ビエンナーレ」にも参加するので日程的にかなりタイトなスケジュールです。

木津川の渡し舟

先日現場調査の際にディレクター佐藤さんから頂いた「木津町の歴史」PDFに目を通していたら一枚の渡し舟の写真を見つけました。

木津町の土久里家で保管されているもので、木津町と山城町上狛の渡し舟として明治時代に運行していたものだそうです。

川で使う舟は浅瀬にも大丈夫なよう底が平になっているのですね。

 今回の展覧会のテーマは「百年の邂逅」です。

「邂逅」とは、[ 思いがけず出会うこと。めぐりあい。]と辞書にあります。

 いい言葉です。

私はこの地(川の湊(港)として栄えた)において重要であったもの、この百年をつなぐ記号的ツールとして「渡し舟」を登場させることにしました。

 

「木津の浜も木津の渡しも、それらは木津の地域の人びとを外の世界に結んでいた要点でした…(「木津町の歴史」より)」

 

舟による外の世界との出会いは沢山の人々や物、夢 を運んできたことでしょう。

そして百年前の人々は既に彼岸の彼方。

こちらとあちらとの渡しも舟。


実船は貴重な文化遺産です。大きすぎて展示場所の蔵にはとても入りません。

今回のために展示場所の広さから視覚的にちょうどいい大きさを割り出して、(1/2スケール)制作することに。

1枚の写真を頼りに作り始めます。


いつもは金属を切っている機械も今回は木工で頑張ってもらいます。

このような作業はカンナが便利ですね。


ほぼ全体の形ができました。

形になってくると川で浮かべたくなりますね。

全体の形が出来上がったので、蔵を想像しながら現場の仕切り扉と同じサイズの木枠を組んで高さや隙間の様子、照明の当て方等をシュミレーションしてみます。

 

船尾の修正

 後日、近畿地方建設局淀川資料館で発行されている「淀の流れ」第61号に多田納久義氏による土久里家で保存されている渡し舟の図面や構造図等の詳しい論文を見つけました。

船尾の「トモ」の構造が詳しく載っています。予想より複雑な構造。

ぜんぜんちゃうやんけ、これはあかん!ということで作り直すことに。

 

「船首部分を主船体に塡め込む手法や特殊な船尾構造は徳川時代あるいはそれ以前からのもので昭和の時代まで受け継がれた模様であり、淀川や木津川水系の川舟にはごく普通にみられるものであった…」

(「淀の流れ」第61号多田納久義氏著)

船首の作りは写真からの分析で塡め込み手法等合っていたのですが、船尾の構造はよく分かりませんでした。しかし船尾のトモは特徴的で重要な様式だと思われるので修正します。

 

これでスタジオでの作業は一段落、あとは舟を現場に持ち込んで金属四葉や現地調達した民具とを組み合わせたインスタレーションを滞在制作します。